トウモロコシの活性炭を使った米のセシウム吸収抑制実験
いつまでも食べられないコメを作る訳にはいかない
3・11の震災以来、消費者は安全性に非常に敏感になっています。震災直後の情報が錯綜している状況で、多くの人が内部被曝のリスクを少しでも減らそうとした結果、買い控えや風評被害というものが起きてしまいました。
◆セシウムが作物に吸収されないようにする物は無いのか?
◆あったとしてもそれは毎年安定して手に入る物なのか?
◆それは高い性能を持っているのか?
この3点が同時に満たされなければなりません。
これまでの実験でトウモロコシの活性炭が有害なヒ素やカドミウムを吸着する高い能力があることが確認されています。トウモロコシの活性炭は高い吸着力を持っているため、ヒ素やカドミウムと同様にセシウムを吸着し、作物内に吸収されないようにすることができるはず。ということで、今回はトウモロコシの活性炭で稲へのセシウム吸収を抑制できるのかという実験を行いました。
トウモロコシの活性炭で稲へのセシウム吸収を抑制できるか?
3・11の震災に伴う原発事故の影響で、安全な農作物を安定して入手できるかという新たな課題が急浮上してきました。はたして、セシウムの吸収を抑えることができるのかどうか・・・。偶然なのですが、2010年、活性炭を水田に投入して稲を育てる実験に協力していただいた2軒の農家さんがありました。そこで、平成23年秋の新米について、トウモロコシの活性炭を入れた場所と入れていない場所のサンプルを入手し、それらの中に含まれるセシウム(放射能はありません)の質量(重さ)を測定しました。
協力していただいた水田の状況は下記の通りです。
①2010年5月にトウモロコシの活性炭を、農家A,B共に圃場1坪につきトウモロコシの活性炭1リットルを入れました。
②2011年はトウモロコシの活性炭は追加使用せず、土壌中に残ったトウモロコシの活性炭を活用することになります。
③農家Aの土は2010年の収穫が終わったままの状態、農家Bでは震災の影響で土の移動があったため、補修の手が加わって土が移動しています。
農家A,Bの玄米および茎に含まれるセシウムの含有率は下のグラフに示してあります。
この実験では放射性でないセシウムの量を測定しているため、このまま放射性セシウムの吸着率と評価することに問題はあるとしても、稲がセシウムを吸収すること、土壌中のトウモロコシの活性炭がセシウムを吸着し、稲の茎や玄米への移行を抑制する効果があることが確認されました。
なお、先にも述べたように、農家A、B共に昨年の5月にトウモロコシの活性炭を入れただけです。土壌中に残った活性炭だけでも効果があることがこの結果から推測されます。
安全はお金がかかるが、回収は可能か?
一番肝心なのが投資効果です。トウモロコシの活性炭を一坪に1リットル投入したところ27%、一坪に0.5リットル投入したところ21%の収量アップという結果が出ています。
トウモロコシの活性炭を投入する事で安全性を向上させる事が出来、さらに収量アップ効果も見込めるため、投資コストを吸収できると考えられます。
実際はこれからがセシウム被害が拡大すると予想されています
3・11の震災以来、消費者は安全性に非常に敏感になっています。震災直後の情報が錯綜している状況で、多くの人が内部被曝のリスクを少しでも減らそうとした結果、買い控えや風評被害というものが起きてしまいました。
情報が落ち着いてきた現在は、安全性が高い物は需要が高いため価格が上がっておりますが、それでも消費者は安全な物を買い求めるため、高値で安定しています。つまり現在、消費者は安全性を求めており、安全・安心を買っているということになります。
裏を返すと、安全なものは高くても売れるということ。たとえば、同じ内容量、同じ産地の3000円の普通の米と4500円のセシウム対策米が並んでいたら消費者はどちらを選ぶでしょうか。多少高くても多くの人がセシウム対策米を選ぶでしょう。ましてや今現在、農業分野ではセシウム対策はほとんどなされておらず、消費者も疑心暗鬼になっています。このような状況下で、「セシウム対策をしている」と言える事は最大の武器となるのです。
放射性物質は岩手県の盛岡市周辺の牧草地でも検出されています。盛岡の北側に岩手山があるため、手前の地域に落ちたと考えられます。この傾向はすべての地域にあり、山に飛散した放射性物質が雨で流れて里の方の田圃などに河川から入っていることが予想されます。どんどん蓄積されるので今年以上に来年の稲作では放射性物質の上昇が予想されて当然です。
福島県の米の安全宣言が出た後に高濃度のセシウムが検出されたという報道は大変な驚きではありましたが、国の検査体制が不十分な状態では出ても不思議はありません。
セシウムなどの放射性物質は3.11段階で全国に飛散しているのですから福島県だけではないのです。実際アメリカ東海岸地域でも乳幼児の死亡率が上昇しているという報道が出ています。もはや日本だけの問題ではないということですから、国内はもっと大変なことになっていると考えられます。
対策としては除去の方法がないので、作物に吸収されない対策を打つしかないことになります。そこで考えられるのがトウモロコシの活性炭を田圃に入れ、セシウムを吸着させることで稲わらや玄米に吸収される量を減らす作戦が現時点では現実的な対策と言えます。
セシウムがなくなることはない。集めれば高濃度になるので広く分布させておくことで被ばく被害を削減することが望まれる。活性炭はセシウムを吸着するが自然分解が発生するので毎年土壌に入れる必要があります。今回の飛散したセシウムが減衰するまでの期間(30年程度)は継続する必要があります。